空と君のあいだに

研究と教育と日々の,思考整理の場

対象を分野にあてはめるな

表題をむかし就職面接を受けた学校の校長の言葉.

日本人の大好きな二分法のひとつに「文系か理系か」がある.全くもって意味のない分類である.そもそも学問分野というのは連続的に分布しており,それを分類するには様々な方法があるのだが,どういうわけか日本人はこれを「文理」に分けたがる.しかも,その「文理」は実は学問分野の分類にはなっていない.単にその学問分野を専攻できる学部学科の入試で要求される科目で分類されているに過ぎない.つまり,「文系・理系」といった場合,学問分野の分類と,それを学ぶために必要な入試科目での分類の2つの意味を持つのだと僕は理解している.そういった背景を踏まえて,僕は「文系・理系」という言葉を発するとき,前者の分類を指すときは「人文系」ないし「数物系」と呼び,後者を指すときは「いわゆる文系(理系)」と呼ぶようにしている.

厄介なのは言葉の定義だけではない.高校での履修科目の選択は,多くの場合,入試で必要となる科目に基づく.従って,修めたい学問分野に必要となるだろう科目でも,入試に必要ないとなると切り捨てられうる.全く残念でたまらない.もちろん大学入試の重要性は分かるのだが,一方で大学入試に必要な最低限の勉強だけで済ませるのはカッコ悪いという風潮をつくれものだろうか.

面白いことに,例えば東京大学に入学すると進入学生は口々に「いかに勉強せずに受かったか」を自慢する(正確にはそういう人もいる).努力するのはカッコ悪いという風潮.90年代ジャンプ漫画が見て悲しむ.まぁ彼らの大多数はかなりの勉強をしているわけだが.個人的には,いかに入試に必要とされない勉強まで取り組めたかを自慢して欲しいと思う.エビデンスのない話だけど.

以上,いわゆる文系進学志望の生徒を主に担当している地学教諭の雑感でした.もちろん,少なくとも勤務校には希望もありますけどね.