空と君のあいだに

研究と教育と日々の,思考整理の場

要素還元主義

一人暮らしを始めてから自炊にこだわっている.料理本を見ながらというほどではないのだが,時間のない朝食と,近所の馴染みのバーに気まぐれで飲みに行く以外,特に用がなければ料理するようにしている*1

料理するようになると興味関心が広がる.まず第一に野菜の相場観が養われる.節約を心がけるとなると,ある一瞬における店舗ごとの違いが最大の興味関心になるのだろうが,そこは独身貴族(仮)のためさほど重視していない.むしろ同じ店舗における価格の時間変化,つまり,野菜の季節感の方に専ら僕の関心は向く.温室栽培や保存技術の向上,輸送網の発達で一年中同じ野菜を食べられる今の時代だからこそ季節感のある生活は大事にしたい.

第二に,これはもちろんのことだろうけど,できた料理の味に関心が向く.もちろんどこで何を食べても美味しいものには感動するし,そうでないものにはがっかりする.ただ,そういったことにさらに注意を払うようになる「程度の問題」ではなく,ひとつ大きな違いが生まれた.味を要素ごとに分解するようになるのだ.調味料や食材を入れる量が適切だったか,より良質な食生活を手に入れるべく反省する.その際,どの調味料がどの味をもたらしたか,調理過程の分かっている分より深く探求し,今まで「なんとなく美味しい」で済んでいた料理のからくりに気づく.最近,ワイン会で残った樽づめボジョレーヌーボーの残りでビーフシチューを作ったのだが,これをそこで痛感した.ビーフシチューのどの味がバターで,どの味がワインから来てるのかと*2.こうしたTry & Errorで良い物を目指す過程はまさに科学そのものなのかもしれない.

*1:つまり,昼は手作り弁当である.前日の夕食とほぼ同じだけど

*2:悲しいことに,数Lの鍋いっぱいのビーフシチューは全て自分で消費した