空と君のあいだに

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Astro-Hの打ち上げ決定

X線天文衛星 Astro-H の打ち上げ日時が決定したらしい.この話自体はもちろんとても喜ばしいのだが,個人的には複雑な感情が渦巻く.
www.jaxa.jp

大学院時代の私の専門はVLBIであった.一方で,院試の願書を提出する学部4年の夏,希望する指導教員を決めるにあたり候補に考えた研究室が1つあった.それが,実は Astro-H に関わる研究室だった.Astro-Hに関わる研究室を第2希望に入れたのだが,第1希望が叶ってVLBIグループに入れたという経緯がある.

もともと活動銀河核(AGN)に関心を持った私は,その内部構造を見たいと思い,AGNの衛星観測を目指す研究室2つを大学院での所属研究室に考えた.当時,進行中だった天文科学衛星のプロジェクトは Astro-H のほかにもう1つあって,それがAstro-G,日本のVLBIグループが主導していたプロジェクトであった.両衛星は,当初の予定では2011年に H-IIA ロケットにより相乗りで打ち上げる予定だったが,Astro-G は開発中止*1,Astro-Hも大幅に開発が遅れ,ついに来年に打ち上げを迎えるに至るのだ.

私が研究室に入った時点で Astro-G の開発は苦しい状況にあったらしく,結局,学生がプロジェクトに大きく関わることはなかった.だけど,Astro-Gの観測で博士論文を書くという意気込みで研究室に入ったものだから,当然,恨めしい気持ち,残念な気持ちも残る.そして,Astro-HじゃなくてAstro-Gを選んでしまった自分に今でも心残りがないわけでもない*2.そういった経緯があるので,Astro-Hの打ち上げ決定を喜ばしく思う一方で,まだまだ「たられば」を考えてしまい心穏やかでなかったりもする.

*1:JAXA|電波天文衛星「ASTRO-G」

*2:Astro-Hを主導していたX線天文学の研究室は理学部の物理学科の所属.天文学科所属かつさほど学部時代に勉強していなかった自分的に,物理学科の人間は超優秀だというイメージがあったので,X線天文学の研究室に進むのを躊躇してしまった.従って,Astro-Gのグループに進んだという経緯がある.結局,自分の学力に自身を持てるほどの努力をしていなかったこと,ただそれだけなのは分かってる