空と君のあいだに

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プリンキピアの意義

しばらく天文関係の研究会から遠ざかっていたが,春に天文学史研究会で講演することにした(天文学ではなく天文学史だけど).一応,ジャンル的には史学系の研究会だけど,まさか史学方面で話することになるとは数年前は思わなかった.会場は国立天文台だし,参加者の中に現代天文学やってる人も多いのだけど.

さて,天文学史の後半のスケジュールを考えている.結果,ニュートンまで到達できればと思うに至った.ニュートンは力学を体系化した点で称えられているが,彼は天文学者とも言える.そもそも力学体系を築けたのはケプラーが惑星運動の3法則を見出せたからである.そもそも力学体系を築くに当たってのモチベーションは天体運動にあったわけだ.もちろん,天文学者であると同時に実験室スケールの現象を扱う物理学者でもあった.そういう意味で,ニュートンは天体運動と地上の現象の各法則に同一性を見出し,両者を統一したという点で優れている.だが,その見方は表面的かもしれない.

プラトンアリストテレス(及びその時代の自然哲学者)は,地上の現象が「善」なる何かに支配されていると考え,地上の世界と星々の世界を分けて解釈していたわけだ.だからこそ天動説が生まれた.ニュートンは星々の世界と地上の世界を結びつけ,両者の分離を終わらせたと言える.つまり,天文学の世界からアリストテレス的宇宙観を完全に追放したという意味でニュートンは偉大なのかもしれない.